アメリカのソフトパワー


米ドルが凋落するってホント?
中国の基軸通貨改革論、その奇妙な論理
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090427/193151/#


基本的には私はこの説または趣旨に心から賛成したい。また、日本は過去何十年か、とにかくそっちにしかステークを置いていないから、勢い心理的にも、そうであらねばならない、と思って見てる。


で、賭けはそんなに悪い賭けではないだろう、と・・・どこまで行ってもしかし、そう思いたい以上にはないのが現実じゃないですかね、など思う。


そんなことを思うのは、やっぱりこの、大きく言えば米が覇権を取った第二次世界大戦がらみあたりから色々問題を内包していることなんだろうし、根本的に英帝国みたいに余裕ぶっこいて帝国をやっていられる状況にない仕組みそのものが問題だという話にはなるんだろう。

が、もっと焦点を絞れば、イラン革命以降ずっと同じように苦しんでるんだよなぁというところが問題で、しかも、さらにさらに米にとって問題なのは、その時からずっと、潜在的に米に与したいと思ってる地域が増えてるかぁ???ってところじゃないかと思う。

少し前、昔の本を読んだら、石油ショックからソ連アフガニスタン侵攻あたりの米のどぎまぎ騒ぎというのが今に重なってみえた。サウジとかイランとか、ソ連はいないけどロシアとか、そして、我々の同盟国たる西欧が西欧が西欧がぁあああと叫んでいるものの実際には西欧がアメに乗ってこない事態とか(その頃、既に後のユーロの構想を考えてたんだろうなぁとか思うと感慨深い)、パキスタンに支援しそこねている状況とか、なんか、既視感いっぱいだった。アメリカの今って、2回目か3回目のストロークなんだよね。


ただ、イラクを叩いたおかげで、多少は前進したとは言えるんだろうし、ロシアはソ連ほどわけわかめのプレゼンスはない(つか、叩いた拍子に中身を見たから今の米にとってはロシアは軍事的には怖くないとは思うが、やっぱりここはそれだけでない戦略だから怖いし、位置が問題だってのは最後まで残るだろう)・・・。これは米にとっては良いこと、なんだとは思う。

が、しかし、その行動のおかげで、かつてソ連を罵ったような真似はできないというのも痛いと思う。相手を侵略者であると断罪して、外交的に同盟側を引き締めるという作戦がもうできない。ぷ、とか笑われそうだもの。


でので、そこで「ソフトパワー」を言うというリスクも考えた方がいいんじゃないのかなぁとも思うんだなぁ。
昨日まで軍事一本やりで、悪い奴は俺が誅するという態度で来て、今日からソフトパワーかい、って、嘲笑を誘うだけだと思うわけで、むしろ道徳的プレゼンスの低下が顕著すぐる、って感じは相当にするんだなぁ、もう。

ただ、確かに、

 逆に言うと、反米あるいは嫌米の方々が今回の米国でのバブル崩壊を、「米ドル離れ」を提唱する絶好の機会だと思うのはある意味で当然のことだろう。ただし、英語の使用もドルの使用も制度で強制されたものではなく、デファクトな(事実上の)ものである点がポイントである。この点で「デファクトの帝国」は「制度の帝国」よりもしぶとく強靭であるとだけ言っておこう。

というのはある程度は本当だと思う。


が、ここがびみょーーーなのは、アメがアメ語で、つまり、アメリカ流の考え方、アメリカで普通であるのを全世界の普通である、みたいにできているわけではない、っていう傾向は今後は過去10年との比較で顕著になるのではないの?

多分、保護主義傾向と似た流れだと思うけど、例えばアメリカ本社が、アジア太平洋地区担当者という統括部隊を作って地域またはフィールドを統括する、というやり方は変わるかも?とか思ってみたり。つまり、フィールドの方が力を持つんじゃないのか、と・・・。

多国籍企業で働いている友達がこの間言っていたことを思い出す。


今までは何のかんのと、アメリカ本社なりアメリカ的教育体制下の現地人(なんか、サーカシビリとかの傀儡みたい~~;)が、あなたたち何でこれができないの、こうして、あれして、とガンガン資料を送りつけてくる、といった体制が今日まであった。

だけどさ、チャイナとかインドとかが膨らんでる中で、そこが稼げるマーケットだってことになっていくわけでしょ、その時、当然に現地のやり方ってのを重んじる傾向は強まるよね。今までのやり方、通じると思う? 「うちではそうしません」と言われて終わりじゃないの???


だそうだった。70年代後半の日本のような感じか。でも、日本は単体で逆らってたから潰されたし、その時代にはアメにはアメの光り方ってのもあったので前向きに付いていく価値というのも部分的にはあった。が、現在の事情が違うのは、アメが弱体化して、昨日は武力、今日はソフトとか言い出すし、その他は何回かクラッシュしてもまだ先に市場を持つ可能性があるほど大きい。これは結構、怖いと思うのよね。


あと、欧州で英語を使うのは、アメリカというより、イギリスがあるかもしれませんよ、とも一応言ってみる。
イギリスって単体の国としては小さいけど、コモンウェルス諸国がいるので、実は大きな影響力を今でももっちょると思われますです。カナダ、オーストラリア、インド、一部チャイナ、中東とか、基本はイギリス文化圏対応国だと思う。まず政治体制、法体系がイギリス式だし。この中にあっては、微妙にアメ語文化圏が単体で異形進化したローカル語って感じ。フランスの異形ともいえるだろうし。


アメリカが難しい位置にいるなぁと思うのは、なんつっても中世がないので西洋史の中に自分を入れないと、法とか、歴史的経緯とかを語れないことか。でもって、時代劇(コスチュームプレイ)もないから、歴史物というジャンルも振るわず、文化史跡を訪ねるとかいう行動形式もなく、なんつーか底の浅い文化しか残らないっていう話になっちゃって、お金儲け関係(政治、経済)以外のサブジェクトで人をひきつけて置けない、ってのも痛い。


ファッションはヨーロッパから来るし(特に白人)、野球やってるコモンウェルスないし(クリケットを地味に戦略的にやってるだすね。カナダが若干異質でクリケットがあまし振るわないのだが、じゃあ野球やってるかといえば大したことはなくて、ホッケーこそ王道で、そうなるとライバルはロシアとかチェコという妙なことになってる。フィギュアスケート好きも欧州臭いね。)


そういうわけで、アメリカがソフトパワーを、とか言うためには西欧組との和解が必要なのだ、というのが多分イギリスの理解だと思う。だから綱渡りして、アメリカをアングロ・アメリカン帝国にしようとしているんじゃんないのか、って思ってみたりもする。田中宇さん的にはイギリスの陰謀に見えるんだと思うけど、私の理解では、これはこれで親心もあると思うの(笑)。